十字屋株式会社
京都音楽院 京都国際音楽療法センター
山村和美院長インタビュー
体で楽しみ、心で味わう音楽
音楽をはじめ、さまざまなエンターテイメントは、新型コロナウイルスによって変革が求められているようです。
これからの音楽について、楽しみ方は変わるのか、音楽家はどのように音楽を提供していくのか?
また、今活用したい音楽のチカラと音楽療法について、
長年にわたり音楽振興に貢献されている、十字屋株式会社の山村和美院長にお話を伺いました。
耳で聴くだけではもったいない!音楽の魅力
―新型コロナを経て、音楽の楽しみ方をどのように捉えますか?
変わらないですね。音楽は音楽です。ただ、音楽というのは本質的には人間の声であり、空気振動であり、建物からの反響を楽しむものです。耳で聴くのではなく、体全体で聴くものですね。録音されたCDやインターネット配信は、頭の中で音楽を「再現」するものと考えます。
―体で楽しむとは、音楽の原点に戻るようです。
―演奏することも、体全体で楽しめるのでしょうか?
音を出した時に得られる感覚は、特別なものです。聴こえる音、心の反応、楽器や体が振動する感覚は、奏でる人にしかわかりません。たとえ初心者だとしても、ただバイオリンの解放弦を弾いて音を出すだけでも、スピーカーから流れる音との違いは明らかです。それを感じることが音楽の楽しみです。ですので、演奏してみるのが一番よいですね。音楽は人と密接に関係していますから、嫌いな人はいないはずです。もし音楽活動が嫌いだとしたら、自分に合わない音楽や楽器を選んでいるのかもしれません。音楽は「ドレミファソラシド」の音階を持つ西洋音楽がすべてではありませんから、さまざまな国や地域の音楽に触れてみてください。心身が感動すると、おのずと楽しくなるでしょう。川の石ころを叩くことだって音楽です。人それぞれに合う楽器、好きな音楽は、本能が知っていますよ。
―JEUGIAカルチャーセンターはたくさんの生徒さんが楽しんでいらっしゃいますね
音楽を体感して、「できた!」という感覚をたくさん経験してもらう場です。家事や仕事がひと段落して、一度はやってみたかった憧れの楽器を始めてみるということも、心を満たします。ですから、講師のみなさんには、技術を高めるために厳しく指導するよりも、音楽の楽しみを一人でも多くの方に味わってもらえるような指導をお願いしています。
京都音楽院は講師を養成するために設立しました。地元である京都に根ざし、知識と技術を持った専門家を育て、音楽を楽しみたい人たちとの循環を活性化していくことで、地域に貢献していきたいと考えています。
これからの音楽家へ
―音楽を提供する音楽家は、新型コロナウイルスによって披露する機会が減少していますが、どのようにお考えでしょうか?
―それはどういうことでしょうか?
自身の音楽性は、人との交流の中で向上していくものだからです。広いホールにたった一人でも、生の演奏を真剣に聴いてくれるお客様に向けて演奏することが大切なのです。30分でもよいので、自分でそのような場を作りなさい、と伝えたいです。聴き手の反応あってこそ音楽家なのです。
大々的に演奏ができないこの時期は、もう一度勉強しなおせる機会です。今までできなかった練習をしてみたり、レパートリーを増やしたりしながら、小さな規模でも人前で演奏し続けることです。そのように、良い音楽家であり続ける姿勢を持ってほしいです。
音楽家とは、音楽学校を卒業した人でも、音楽を生業にしている人でもありません。音楽家とは心と体を響かせて、良い音楽を奏で続ける人だと、私は思っています。
宇宙の調和が地上に降りてきたもの、
それが音楽
―音楽療法とは、どのように生まれたのでしょうか。
音楽は、数学や哲学、天文学などと同じ、古代ギリシャにおける学問の一つです。ピタゴラスは、天体の星同士がバランスを取り合う中で音が生じ、そのハーモニーが地上に降り注ぎ、人に影響していると説いていました。またアリストテレスは「人間の体そのものが音楽だ」と言い、健康が損なわれているのは体が不協和音を奏でているからだと述べていますが、このように音楽療法の概念は、紀元前600年頃から確立されていたと言えます。
―壮大です。どのように現在の音楽療法が確立されたのでしょう。
海外では早くから取り入れられていました。近代では、ドイツにて音楽ショックを与える精神の治療を行っていました。アメリカでは、戦争下の怪我をした兵士を慰めるためにのホスピタルミュージックとして病棟で音楽を流したところ、音楽を聴いた人のほうが聴いていない人よりも良好な回復傾向が見られたのです。研究から、音楽は精神や脳のはたらきを正常に戻す自己回復力を養うことができるとして、高齢者のリハビリに取り入れられるようになりました。現在では音楽が心身にはたらきかけ、脳や精神、体の機能を整えることや、自己回復力を高めることが出来るとし積極的に研究が進められております。この現代音楽療法の概念が日本に入ってきたのは1960年頃からです。
調和状態に戻す音楽療法
―現代日本における、音楽療法とは。
みなさんにも、カラオケを歌うことや踊ることによって、心がすっきりした経験はおありだと思います。音楽を使って、計画的に心身の不調和を調和させていく方法が音楽療法です。一般社団法人日本音楽療法学会による定義には「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復や機能の維持および改善、生活の質の向上などのために、音楽を意図的且つ計画的に使用する療法」とあります。
音楽療法には大きく2つのカテゴリーがあります。
●能動的音楽療法 演奏など参加することによって心身の回復を意図する
●受動的音楽療法 音楽を聴くことによって精神領域への影響を重視する
例えばリハビリを行う際、腕の曲げ伸ばしを20回やりましょうと言われると苦痛を感じ、本人の意識では「できない」と思うことでも、能動的音楽療法によって、リズムにのって体を動かすことで自然にできることがあります。
受動的音楽療法としては、コンサートに足を運ぶことや、家で音楽をきくこともその一つ。個人の経験によって適した音楽は異なるため、セラピストにはさまざまな知識と対応力が必要になります。京都国際音楽療法センターでは、音楽療法指導員を養成していますが、現場で生かせる実践的なカリキュラムを組んで指導をしています。
―音楽療法が取り入れられた例にはどのようなことがあるのでしょうか。
音楽が人にもたらす大きな作用として、忘れている記憶を思い出す「回想法」があります。例として、家族関係も分からなくなったような認知症の進む母親に「りんごの歌」を歌いかけると、一緒に歌い始め、娘の名前を思い出す、というようなことがあります。歌による回想法の一例です。他にも多動症の子の歌唱やアンサンブルによる行動改善、知的障がい児のリズムワークによる活動統一性の変化など、いろいろあります。
現代に生きる私たちと音楽
―今私たちにできる、音楽を利用した心の調和にはどのようなことがありますか?
ストレスの多い現代社会、特に現在のような不安定な状況下においては、精神的負荷をやわらげ、ストレスへの対抗力を向上させたいものです。悲しい時に悲しい曲を聴くと心が軽くなったり、怒りには激しい音楽を聴くと心が鎮まったりした経験はありませんか?これは理に適っています。悪化した心理状態においては、よどみを一気に吐き出して浄化するというカタルシス(浄化)効果を得るために、気分と同質の曲想で、心のテンポに同期させるという「同質の原理」によって、その状態を作りだすことができるのです。
―何かと不安の多い現在ですが、例えばどんな音楽があるのでしょうか。
音楽療法では、セラピストが個人に合わせて音楽をセレクトしますが、日常的に心にアプローチできる音楽として、クラシック音楽を中心にいくつか挙げてみましょう。(あくまでも一例です)
■温かさを感じ、不安と緊張を解きたい時
(体全体を包み込み溶かすように不安を除いていく)
ヴィヴァルディ 「四季」より春
バッハ 「ブランデンブルク協奏曲5番」
シュトラウス 「ウィーンの森の物語」ほかワルツ集
グレン・ミラー、ベニーグッドマン等のスウィングジャズ
こんな音楽を聴きたいな、踊りたいな、歌いたいなという気持ちは、年代に関わらず本能の欲求です。心身が求めている音楽を素直に取り入れ、心から楽しむことが大切ではないでしょうか。人の心が、いつも自然の状態であることを失わないように、と願っています。
株式会社十字屋/京都音楽院 京都国際音楽療法センター
院長 山村和美
Kazumi Yamamura
1932年生まれ。クラリネット奏者の父親とピアノ奏者の母親の間に生まれる。
高校時代から興味を持っていた作曲をはじめ、ピアニスト、指揮者など経験、ヤマハ音楽教室東京本部等を経て、株式会社JEUGIA 音楽振興事業部長となる。
京都音楽院、京都国際音楽療法センターの開設者であり院長である。さまざまな事業を通じて日本のみならず海外でも音楽振興を牽引し続け、独自に実施した小学生のためのピアノコンテスト「ブルクミュラーコンテスト」の開催は90回を超える。
Photos 樋口航 / Words 浅野晶
TEACHER INTRODUCTION
JEUGIAカルチャー・京都音楽院の講師紹介
JEUGIカルチャー
フルート講師
渡辺 朋宏
私がフルートに出会ったのは小学1年生の時でした。ラジオから流れてきたその音に魅せられどうしてもやってみたくなったのです。
小学2年生から習い始め中学入学と同時に吹奏楽部に入部。その時からの音楽に関わる素敵な仲間達との出会いが私の人生の宝物になっています。
コロナ禍の今もフルートと、そして音楽と共に過ごす事によって人と会えない淋しさにも希望を持ち続ける事が出来ました。
何かの楽器を習得するのは孤独な作業ですが、上手下手ではなく志を同じくする者同士の出会いは掛け替えのないものです。
もし興味がある、又は憧れている楽器がある方、年齢も何も関係ありません。素晴らしい音楽の世界へようこそ!
大阪教育大学特設音楽課程卒業
JEUGIA京都音楽院
箏ピトレスク講師
市ノ瀬 佳子
私が箏に出会ったきっかけは、高校時代のクラブ活動でした。それからずっと箏と共に生きています。
演奏活動を続けていく中で、いつしか自分だけの表現のかたちを追究したいという思いが大きくなり、ソロ活動をスタート。
自作の絵や立体物に囲まれて演奏する作品展を開いてみたり、物語の劇中曲をつくってみたり。作曲、演奏活動をしながら模索、実践しています。
箏と何をするか、その向き合い方は人の数だけあると思います。
「ピトレスク」はフランス語で“絵のような”という意味です。
自分だけの音に出会い、曲の世界を自由に描けるよう一緒に取り組んでいけたらと思っています。
大阪音楽大学卒業、同大学専攻科修了。
これまでに全曲オリジナルCDを2枚リリース。
JEUGIカルチャー
ギター講師
溝淵 仁啓
桜に別れを告げて現れる若葉。もみじに別れを告げて風に舞う枯葉。同じ別れでも随分表情が違いますね。譜面は同じラでも希望のラと失望のラ。それを表現出来るのが音楽です。その手立てとして楽器が有ります。私はギターと出会いましたが その魅力は音色です。理屈無く心の奥に届く多彩な響き。その音糸を少しずつ紡いで行くとそこには 宝物の世界が現れます。但だ此奴は些か手強いけれど取扱いさえ間違えなければ必ず生涯の友となってくれる事は間違い有りません。是非一度手に取って音を出して見て下さい。きっともう一度弾きたくなりますよ
故尚永豊文、故J.L.ゴンザレス各氏に師事。
1986年第11回ギター音楽大賞グランプリ受賞。
京都音楽院
声楽講師
磯村 真綸
「発声の練習に終始しない」ことを心がけながら、ピアノマスターコース、音楽療法マスターコース等に在籍している学生に向けて「歌唱基礎」の授業を行なっています。まずは美しいメロディの流れを感じて、音楽に浸ってみる。歌詞を読んで想像を大きく膨らませてみる。リラックスして自分の身体や呼吸に目を向けてみる。そうして自然な息の流れに乗せてのびのびと歌えた瞬間にはとても大きな喜びがあります。それぞれの持つ歌声を磨きながら、音楽の楽しさを共に味わう時間にしたいと思っています。
宮城県出身。京都市立芸術大学音楽学部卒業。京都音楽院福祉音楽パートナー指導者養成コース修了。平安女学院高等学校非常勤講師。
JEUGIカルチャー
チェロ講師
三宅 香織
チェロの音は人の声にとても近いのです。豊かにお喋りするこの楽器を奏でる喜びを、共有したいと思っています。独奏楽器としても大人気のチェロは、曲のレパートリーも沢山。構え方が自然なので、大人になってから始める弦楽器としても適しています。わたしが特に魅力的だと思うのは、チェロだけで合奏ができるところです。持っている音域が広いので実現できる事なのですが、素晴らしく美しい響きがします。故にチェリスト達はとても仲が良いのです。是非、魅力溢れるチェロを手に取ってみてください。一緒に音楽を奏でましょう。
相愛大学音楽学部卒業。ポーランド・ショパン音楽院サマースクールにてディプロマを取得。神山交響楽団低弦トレーナー。「シンフォニー宙」メンバー。
京都音楽院
クラリネット講師
加藤 京子
〒604-0871 京都市中京区東洞院通丸太町下る三本木町439番地 ABBEY ROAD御所南